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ネット・バカ - インターネットがわたしたちの脳にしていること。注意力散漫の脳は是か非か

ネット・バカ - インターネットがわたしたちの脳にしていること という本をご紹介します。

 

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること

 

 
ブログエントリーの内容です。

  • ネットがもたらす注意力散漫な脳
  • 注意力散漫は是か非か (思ったこと)

 

ネットがもたらす注意力散漫な脳

本書の主題は、ネットを当たり前のように使うようなり人間の脳に変化が起こっていて、脳が注意力散漫になることへの警鐘です。1つのことに長く集中できないという状態への危惧です。

例えば、頻繁に FacebookTwitter を見る、メールを受信する度にメッセージ受信のアラートで作業を中断してしまう、などです。中断頻度が多いほどそれ以外のことを長くやり続けることが困難になります。

原題の英語は、THE SHALLOWS です。Shallow は浅瀬という意味で、深い集中ができないことを指しています。

邦訳版のタイトル 「ネット・バカ」 と Shallow はニュアンスが違うように私には見えます (サブタイトルは、What the Internet Is Doing to Our Brains で、邦訳は 「インターネットがわたしたちの脳にしていること」 でそのままです) 。

話を戻すと、著者がこの本を執筆するにあたり、あえてネット環境が整っていないコロラド山中に引越し、携帯電話が通じず、ネット回線スピードが遅い状況に身を置いたことを書いています。

ツイッターのアカウントを閉じ、フェイスブックを休止、スカイプもほとんどやらずに、メールのチェック頻度も少なくしたそうです。

当初は苦痛で苦労したようです。しかし、ネットへの常時接続をやめた環境に慣れてくると、目の前のことへの集中力が増し、執筆活動が大いに進んだとのことでした。


注意力散漫は是か非か (思ったこと)

ここからは、本書を読んで思ったことです。注意力散漫なことの是非です。

本書で興味深かったのが、人間の歴史のほとんどの期間で脳は注意散漫な状態であったという指摘でした。というのは、他の動物同様に不意に敵に襲われたり、近くにある食料を見落とさないようにするために、常に複数のことに注意力を注いでいたからです。自らの生存のためです。

もともと脳は、1つのことに集中するよりも注意力散漫な状態のほうが自然だったのです。しかし、人間社会が発達するにつれて身の安全は保証されるようになり、生活や知識向上に必要な文字情報を獲得するなど、1つのことへの集中力が必要になっていきました。

以上の長期の時間軸で考えれば、インターネットにより、再び注意力散漫な状態になる揺れ戻しが起きていると見ることができます。ネットにより脳が進化したとも言えるし、本来の自然な状態に戻ったのか、あるいは、退化したと見なすかです。

私の見方は、マルチタスクが自然とこなせるようになる強制的な進化の途中で、なおかつ、必要に応じてシングルタスクにも切り替えられる (戻せる) ように人は適応するということです。

 

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること

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