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実戦 商品開発マーケティング戦略 (佐藤義典) 。お客の使い方と価値を中心に進める 「うれしさ開発」

実戦 商品開発マーケティング戦略 という本をご紹介します。

 

実戦 商品開発マーケティング戦略
 

 

エントリー内容です。

  • 本書の内容
  • 開発の肝は 「お客の使い方」
  • 戦略 BASiCS 。一貫性と具体性を両立する

 

本書の内容

以下は、本書の内容紹介からの引用です。

顧客がモノを利用する TPO (時間、場所、場合) から発想しなければ、売れる商品は生まれない。シンプルだが見落としがちな、TPO に基づく商品開発のアイデア発想と企画プロセスを著者が持つメソッドに沿って紹介する。

 「刺さる商品」 はどう作るのか?
 「ヒットはどのように考えて開発されたのか?」
 「どんな戦略のもとで開発されたのか?」 …さまざまな事例で解明

 

印象に残ったのは、書かれている内容がたった一言で表現されていることです。

 「使い方」 を中心にして、戦略 BASiCS から全体の一貫性・具体性をとっていく

この一文に本書に説明されていることが凝縮されています。ポイントは3つです。

  • お客の使い方
  • 戦略 BASiCS
  • 一貫性と具体性

 

開発の肝は 「お客の使い方」

本書で強調されているのは、開発する商品のお客の使い方です。

 「価値は使い方に現れる」

消費者や利用者・ユーザーの立場で考えると、商品やサービスを買うのは、実際に使い消費する際に得られる 「うれしさ」 があるからです。うれしさとは、商品・サービスを使って得られる価値です。

まとめると、「使う → 価値 → うれしさ」 と連動します。商品開発をするのは、お客にうれしさを届けるためです。本書には、「商品開発とは "うれしさ開発" である」 と書かれています。

使い方を中心にした開発ステップ

本書で紹介される開発ステップは、以下の4つです。

  • ステップ 1:イデアを得る・思いつく
  • ステップ 2:お客の使い方を考える。具体的に描く
  • ステップ 3:使い方に合った強みをつくる。強みとは、利用シーンで競合ではなく自分たちが 「選ばれる理由」
  • ステップ 4:使い方を提案する。「価値は使い方に現れる」 なので、使い方提案から価値をイメージしてもらう


4つは必ずしもこの順番ではありませんが、ポイントは 「アイデアの出口は使い方である」 ということです。

顧客視点での商品開発

本書で一貫している考え方は、お客の立場で商品を開発する姿勢です。使い方を中心に開発するとは、顧客視点で考えることです。

商品開発を 「うれしさ開発」 と捉えた時に大事なのは、自分たちが開発する商品がお客のうれしさに本当につながるのかという認識です。

開発する商品は自分たちのためである以上に、使ってもらうお客のためです。商品のもとになるアイデアや実現するための技術は、お客に使ってもらい、価値を実感してもらい、全てはお客のうれしさのためなのです。

 

戦略 BASiCS

本書で使われるフレームが戦略 BASiCS です。著者の佐藤義典氏が提唱する独自の戦略フレームです。

商品開発では戦略 BASiCS は、開発アイデアの発想ツールにも、開発の指針や検証ツールにも両方で機能します。

戦略 BASiCS は、次の5つで構成されます。5つはそれぞれ連動します。

 

Battlefield (戦場)

  • 市場は、自社商品 + 競合で構成される
  • 顧客の頭に浮かぶ選択肢が市場である。市場は売り手側が決めるのではなく、顧客視点で市場を設定する

 

Asset (独自資源)

  • 独自資源とは、強み (以下の Strength) を実現するための源泉ポイントは、強みが簡単に真似されないような、独自性があるかどうか
  • 自社で保有する技術や人的資産、特許、提携する外部パートナー、企業カルチャーなど
  • ポイントは、強みが簡単に真似されないような、独自性があるかどうか

 

Strength (強み)

  • お客が、競合ではなく自分たちを選ぶ理由
  • 選ぶ理由とは、お客にとっては価値であり、うれしさ

 

Customer (顧客)

  • 提供する商品やサービスを価値だと思ってくれる顧客
  • 顧客から見ても、この商品・サービスを買いたいと思えるような、顧客と自社で相思相愛になる顧客が望ましい

 

Selling message (メッセージ)

  • 使い方と価値 (強み) を、どんなメッセージで提案するか
  • メッセージを5つの要素に入れているのは、どんなに良い商品で高い価値がもたらさせるとしても、顧客に知られていなければ意味がないから

BASiCS の整合性

BASiCS で一貫性が取れれば、以下のようなきれいな流れができます。

  • 戦いやすい市場で [戦場]
  • 独自資源を活かし (ノウハウや資産など) [独自資源]
  • 差別化された商品・サービスを [強み]
  • ターゲット顧客に対して [顧客]
  • わかりやすく価値を伝えられる [売り文句]


一貫性と具体性を両立する

本書の最初に書かれているのは、商品開発が失敗する2つの要因です。

  • 一貫性のある戦略の欠如:自分たちは重要だと思っているが、お客が求めていない。強みがない
  • 使い方の具体性の欠如:お客にとって使い方がピンとこない。利用シーンと商品が乖離している


戦略に一貫性を持たせるために、戦略 BASiCS を使います。

また開発にあたって重要なのは、関係する各組織での情報共有と認識のすり合わせです。商品開発では、開発、マーケティング、営業の3つの部署です。

顧客は営業の先にいますが、顧客との対話や顧客理解を営業だけに任せるのではなく、3つの全ての部署で顧客に向き合う体制が組め、異なる部署同士で密なコミュニケーションができるかです。

使い方の具体性も、戦略 BASiCS で顧客を明確にし、利用シーンでの使い方、どんな価値を提供し、具体的にどのようなうれしさを実現するのかを設定します。

商品開発から使い方を提案する際に、「それは今までの何を代替するのか」 や 「どこから売上を持ってくるか」 という、開発する商品で何をリプレイスするのかの視点が大事です。

 

最後に

本書の特徴は、書かれていることに 「一貫性」 と 「具体性」 が明確なことです。

一貫性は、この本に限らず佐藤氏の他の著書ともつながっています。具体性については、本書では身近な商品を事例にわかりやすく書かれています。

商品開発は、アイデアや技術がまずあり、自分たちの視点で何がつくれるかという発想になりがちです。たとえ開発のきっかけは自分たちが主語であっても、アイデアや技術の出口は顧客です。顧客の使い方、価値、そしてうれしさで、主語は顧客です。

この考え方は、商品開発だけではなく、マーケティング、企業戦略においても共通することです。

 

実戦 商品開発マーケティング戦略