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あらゆる領収書は経費で落とせる (大村大次郎) 。奥が深い経費と税の世界

あらゆる領収書は経費で落とせる という本をご紹介します。

 

 

エントリー内容です。

  • 本書の内容
  • 会計で大事なのは利益調整
  • 興味深かった税の世界 (3つ)

 

本書の内容

以下は、本書の内容紹介からの引用です。

飲み代も、レジャー費もかる~く OK !家も車も会社に買ってもらおう!?

経理部も知らない 「経費のカラクリ」 をわかりやすく解説。元国税調査官が明かす、話題騒然の実践的会計テクニックとは?

経費をうまく活用することで、コストカットにつながる。領収書を制す者は会計を制すのだ。ふだんの経費申請から、決算、確定申告にいたるまで、総務部も、営業マンも、自営業者も、経営者も、すぐに役立つ一冊。

 

会計で大事なのは利益調整

本書の考え方は、会計で大事なのは利益調整をすることです。利益とは、「売上 - 経費」 によって算出されます。重要なのは、想定通りの利益を出すことです。利益は少なすぎても、多すぎてもいけないという考え方です。

特に中小企業や個人事業主にとって、多すぎる利益は支払う税金が多額になることを意味します。

売上は自分で全てをコントロールできません。利益調整は、経費を多くしたり少なくすることによって行ないます。

 

興味深かった税の世界 (3つ)

この本には、具体的にどうやって経費を多くするかが書かれています。タイトルの通り、(不正ではない範囲において) 事業に少しでも関連する領収書は、経費で落とせることがわかります。

経費として計上すれば利益が減るので、節税になります。

本書に書かれていたことで、特に興味深かったことは以下です。

  • 福利厚生費を活用すれば利益調整は自由自在
  • キャバ嬢への愛人手当を経費で落とす方法
  • 税務署の思惑と対応

それぞれについて、ご説明します。

1. 福利厚生費を活用すれば利益調整は自由自在

生活に関する様々な費用が、福利厚生費として経費で落とせます。

例えば、スポーツクラブの会費、コンサートやテーマパークのチケット、旅行です。さらに、社員の昼食や夜食代、洋服代、書籍代、パソコンや車、パソコン、マンションの家賃にいたるまで、福利厚生費として出すことができるとのことです。

衣食住のほとんどが経費で落とせる対象になります。福利厚生費として計上すれば、例えば会社経営者は、自分の生活のほとんどを会社の経費で賄うことができます。経費を増減させ、利益調整は自在です。

福利厚生費で落とすためのポイントは、会社がお金を出すことです。

社員がチケット等を買って会社に申請し後から立て替えるのではなく、会社が入手し、社員に付与する形を取ります。賃貸物件も同じです。会社名義で借主として契約し、社員への住居を与えます。

2. キャバ嬢への愛人手当を経費で落とす方法

興味深かったのは、愛人への手当です。正当な方法を使えば、愛人手当も経費にできることでした。

もし自分のポケットマネーから出せば、そのお金は会社からの給料なので税金がかかります (所得税地方税社会保険料) 。しかし、経費にすれば個人に税金はかからないばかりか、利益を減らせるので会社が支払う法人税を下げることができます。

愛人手当を経費で落とす方法は3つ紹介されています。

  • 社員 (または役員) として雇う
  • 業務委託をする
  • 情報提供料を払う

1つめは、愛人を社員 (もしくは役員) にすることです。例えば秘書として雇うことです。愛人が自分の会社に出社し働くことが必要ですが、勤務実績があれば愛人手当を給料として愛人に支払うことができます。

2つめは、社員として雇いませんが、愛人に業務委託をすることです。委託する業務内容は、例えば、キャバ嬢であればキャバクラへの来店客がどういう人なのかの調査、同僚の若い女性の実態を教えてもらう市場調査です。注意が必要なのは、委託した業務の記録は取っておくことです。

3つめの方法は、愛人から業務に関する教えてもらったことに、情報提供料として支払うことです。2つめと似ていますが、こちらは提供物そのものに対価を支払います。

本書では、愛人手当という具体例を考えることによって、経費の落とし方を学ぶことができます (決して愛人を奨励しているわけではありません) 。

愛人へのお金を経費にできるのであれば、例えば家族を3つの方法のいずれかを使うことも可能です。具体的には、親も非常勤役員にしたり、業務委託をすることです。

3. 税務署の思惑と対応

税務署の考え方や振る舞いの話も興味深く読みました。以下は本書からの引用です。

税務署というのは、より多くの税金を取るのが仕事なのです。だから、納税者に対しても (会社に対しても) 、なるべく多くの税金を取ろうと誘導します。

そして税務署員の中には、適当なことを言って、税金をせしめる輩も大勢いるのです。たとえば、「個人事業者には福利厚生費は認められない」 などと言う税務署の調査官もいます。これは 100% 嘘です。個人事業者であっても、会社と同じように福利厚生費は認められています。

しかし、調査官はそういうデタラメなことを言って、福利厚生費を計上している個人事業者の申告を修正させ、追徴税を搾り取るのです。納税者の無知につけこんで、払わなくてもいい税金を取るのです。

 (引用:あらゆる領収書は経費で落とせる)

 

もう1つ、興味深かったのは、納税者は 「領収書が間違っていないこと」 を証明する必要はないことです。一方で税務署のほうは、間違いを証明する必要があります。

再度、本書からの引用です。

税金は納税者が自分で申告して自分で納める、というシステムです。

税務署や税務当局 (地方自治体など) は、納税者の申告が "明らかに誤っている場合" に限って、修正できることになっているのです。そして 「誤りを証明する」 のは税務署側の仕事であり、納税者側が 「誤りでないことを証明する義務」 はないのです。

もし何かおかしい領収書があった場合、納税者側はそれを正しいと証明する必要はないのです。税務署側が 「それは間違っている」 と証明できて初めて修正ということになるのです。

たとえば、紙切れ1枚で相手先の印鑑も押していない "領収書もどき" があったとします。税務署の調査官はこれを 「不審だ」 と思います。でも、税務署がそれを修正申告させるためには、「不審だ」 というだけではダメなのです。この領収書に記載されている取引が 「嘘であること」 を自ら証明しなければならないのです。

これは、タテマエの話をいっているのではありません。実際に税務の現場ではよくある話なのです。

 (引用:あらゆる領収書は経費で落とせる)


もちろん、架空や虚偽の領収書を作ったり使用するのは法的に認められません。この前提はあるものの、納税者と税務署の責任の違いは覚えておいて損はありません。

 

最後に

本書を読んであらためて考えさせられたのは、売上や利益に対して事業主と雇われる社員とで、見方が全く違うことです。

勤め人であるサラリーマンの感覚からすれば、自分たちの売上をどう伸ばすか、コスト (経費) をいかに抑えるかを考えて働きます。どれだけ会社の利益を増やせるかです。

しかし、事業主の関心は、いかに計画通りの利益を出すかです。多すぎても少なすぎてもいけません。

「売上 - 経費 = 利益」 において、事業主がコントロールできるのは経費です。想定外に売上が高くなり、経費が変わらなければ、事業主にとっては高すぎる利益は手放しで喜べる状況ではないのです。

勤め人と事業主のお金に関するマインドの違いは興味深いです。事業主にとっては、コスト (経費) は、節約し下げればいいことは必ずしも正しくはありません。必要に応じて、いかに経費として多く使うかという発想は新鮮でした。