ソーシャルデザイン - 社会をつくるグッドアイデア集。｢自分ごとの問いかけ｣ から素敵な未来をつくっていく
ソーシャルデザイン - 社会をつくるグッドアイデア集 という本をご紹介します。
この本は、ウェブメディアである greenz (グリーンズ) が発信する社会をよくするアイデアを紹介しています。
エントリーの内容です。
2匹のパンダが配った1枚のチラシ
アイデア集の中で印象深かった事例は、WWF (世界自然保護基金) が2011年7月にハンガリーで実施したプロモーション活動です。
ハンガリーでは、支払う税金の 1% をチャリティ団体に寄付できる制度があります。このプロモーションは、WWF がハンガリーの人々に、寄付の呼びかけをチラシで行なう事例でした。
たった1枚のチラシ紙が、28万人以上の人にメッセージを伝えたそうです。どのような工夫があったのでしょうか？
こちらが、プロモーションの様子を伝える動画です。
Pandas in the mall. The greenest leaflet campaign for WWF.
1枚のチラシを配ったのは、パンダの着ぐるみを来た2人組です。
パンダは、ショッピングモールのエスカレーターの上と下にスタンバイします。パンダ 1 がエスカレーターに乗るお客さんにチラシを渡し、エスカレーターで上るまでの間にチラシを見てもらいます。
ここからが普通のチラシ配りとは違います。エスカレーターの終わりでパンダ 2 がチラシを回収します。そのチラシを今度はエスカレーターを降りる人に渡し、エスカレーターの下でパンダ 1 がチラシを回収します。
この繰り返しです。エスカレーターの上下のパンダ2人と、エスカレーターの中だけで1枚のチラシが回っています。
エスカレーターの昇り降りの隙間時間をうまく使っています。エスカレータでの移動時間は、わずか数十秒程度です。チラシは、その時間に読める情報量です。パンダの着ぐるみが配るというインパクトがあります。
このプロモーション活動の様子は YouTube 等で取り上げられました。話題を呼び、28万人以上の人に伝わったという事例でした。
自分ごとから始める ｢問いかけ｣
グリーンズが考える ｢ソーシャルデザイン｣ とは、社会問題の解決と新たな価値を創出する画期的な仕組みをつくることです。本書では、WWF の先ほどのプロモーション事例のような、ユニークな興味深いアイデアが紹介されています。
共通してるのは、アイデアが ｢何とかしたい｣ や ｢こうなればいいのに｣ という個人的な思いから始まっていることです。
後から話を聞けば、多くの人が同じように抱えていた不便でも、それを強い問題意識で捉え、その人ならではのアイデアや解決方法を考え、実行し解決していきます。アイデアには楽しさもあります。
始めは自分ごととして取り組んだものが、次第に共感を呼び ｢自分たち事｣ になっていきました。世の中に影響を及ぼし、社会を変えました。
問題を認識していても (もしくは問題とすら意識されないものを) 、誰かがやるだろうという他人事では何も生まれません。自分ごとや自分たち事という一人称から始まったからこそ、世の中を動かしました。
問いかけは課題設定につながる
本書の最後に、次のことが書かれていました。
1 + 4 = ? を教えるのが日本の教育です。? + ? = 5 を教えるのが海外の教育だという話をよく聞く。
前者は与えられた問題に ｢正解｣ を答えさせます。後者は問題という ｢問いかけ｣ 自体を考えさせるものです。
これは示唆に富みます。問いかけとは、課題設定につながること、イシューから考えること、論点を整理することです。
最後に
以下は、本書の内容紹介からの引用です。
毎日の暮らしも世界の問題も、たったひとつの思いつきで ｢楽しく｣ 変えられる。
おばあちゃんを元気にするニットブランド、街を賑わす ｢うわさ｣ の貼り紙。月間読者12万人、毎日更新されるいま大注目のウェブマガジンを営むグリーンズが、社会を変えた伝説のアイデアを世界中から紹介。
これからの街づくり、子育て、エネルギー…… ｢自分ごと｣ で未来の社会をつくるためのヒント集。
