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1年で駅弁売上を5000万アップさせたパート主婦が明かす奇跡のサービス (三浦由紀江) 。幕の内弁当ではダメ、100人のうち5人が本当に満足する駅弁を

1年で駅弁売上を5000万アップさせたパート主婦が明かす奇跡のサービス という本を取り上げます。

 

 

興味深かった駅弁の開発話から、戦略とは何かを考えます。エントリー内容は、以下です。

  • 100人のうち5人に本当に喜ばれる駅弁を
  • 戦略とは何を捨てるか
  • 絞るからこそやることが明確になる

 

100人のうち5人に本当に喜ばれる駅弁を

本書に書かれていたのは、「100人にウケる1つの駅弁よりも、5人にウケる駅弁を20種類あったほうがよい」 という考え方です。以下は本書からの引用です。

シンプルなお弁当のほうがお客様にピッタリ合う場合が多いのです。

たとえば、お肉が食べたい気分のお客様はお肉をお腹いっぱい食べられるお弁当があったらうれしいですし、魚が好きなお客様は魚介類の素材にこだわったお弁当を食べてみたいと思うでしょう。

そしてもう1つ、シンプルなお弁当は、アピールポイントがはっきりしているので、販売スタッフがお勧めしやすいのです。

 (中略)

中途半端なおかずがいろいろ入っていて何をアピールしていいかわからないお弁当より、シンプルでわかりやすいお弁当のほうが絶対お勧めしやすいのです。

ただし、そういうシンプルなお弁当はたくさんの人に受けるわけではありません。たとえば、さばだけがドーンと入ったお弁当を100人にお勧めしたとしても、そのお弁当に満足するのは5人くらいです。

でも、5人が確実に満足するお弁当を20種類取りそろえれば、100人全員満足してくれるはずです。

 (中略)

もちろん、100人全員が満足してくれる駅弁を開発できるなら、コストを下げて利益を上げるためにもそれが最良の方策です。

でも、100人が確実に満足する駅弁を開発することは不可能です。100人の中には肉が嫌いな人も、魚が嫌いな人もいますから、どんなにおかずを取りそろえて豪華な幕の内弁当をつくっても、このおかずが全部好きという人はごくわずかです。

 (引用:1年で駅弁売上を5000万アップさせたパート主婦が明かす奇跡のサービス)

 

幕の内弁当ではダメ

本書に書かれていた、著者が地方の駅弁業者と新しい駅弁を開発するエピソードが興味深く読めました。駅弁業者に 「幕の内弁当ではダメ。その地方で自慢できる素材を1つだけ使って、シンプルな駅弁を開発してほしい」 と要望した話です。

幕の内弁当とは、おかずの種類が多く、各おかずの量が少いお弁当です。100人全員が当たり障りなく食べられる駅弁です。

著者の考えは、幕の内弁当ではなく、100人のうち5人だけでいいので、その5人が本当に満足してくれる駅弁が良いというものです。その地方で自慢できる素材を1つだけ使う、それ以外の素材は使いません。やることが明確です。

 

戦略とは何を捨てるか

戦略の要諦は 「何を捨てるか」 です。

幕の内弁当には、多くの人が満足するために色々なおかずが入っています。「シンプルな駅弁」 はそれを捨て、素材を1点に絞ったものです。

素材はその地元で自慢できるものです。その地方でしかない素材、あるいは他の地方で入手できても自慢できるものであれば、他の駅弁と差別化ができます。正確に表現をすれば、その素材が好きな人にとっては、他の弁当ではなく、その駅弁を選ぶ理由になります。

 

ウニだけに絞った駅弁

本書に紹介されていた駅弁で印象的な商品がありました。ご飯の上にウニがふんだんに載せられたウニ弁当の 平泉私の好きな金色うにめし です。

 

引用:斎藤松月堂


名前は著者が考えたものです。うにめしでは弱いので、平泉の金色 (こんじき) 堂から金色を取りました。著者がコンセプトから提案し、自分のイメージ通りに開発した駅弁です。名前に入っている 「私の好きな」 は、文字通り著者自身がこの駅弁が大好きだからだそうです。

 

絞るからこそやることが明確になる

素材を1つだけに絞れば、その駅弁のネーミングもユニークなものにできます。単に奇をてらった名前ではなく、その素材を効果的にアピールする駅弁名称をつけることができます。

素材を絞る効果は、実際に販売する駅弁販売員にも良い影響を与えます。お客さんにアピールできる点が明確なことです。販売員が説明をしやすいのと、それを聞くお客さんにとっても、自分がその1つの素材が使われたお弁当を食べたいか食べたくないかが判断しやすいでしょう。

 

最後に

今回の駅弁の話でポイントは、100人中5人でよいという振り切っていることです。もし、100人のうち30人や20人などであれば、絞り方は中途半端です。

本書での駅弁の話は、普段はあまり馴染みがないものでしたが、マーケティングの観点から興味深く読めました。プロダクトとプロモーションに一貫性があります。