模倣の経営学 (井上達彦) 。守破離の 「守」 から始まるイノベーション
模倣の経営学 - 偉大なる会社はマネから生まれる という本から、真似から生まれる創造性を考えます。
エントリー内容は以下です。
本書のテーマ
この本の主題は 「イノベーションはマネから生まれる」 です。
真似と聞くと、独自性や創造性ではないと思われるかもしれません。本書で取り上げるのは表面的な真似ではなく、本質的な模倣から生まれるイノベーションです。
表面的とは製品やサービスのレベルのことです。一方の本質的な模倣とは、事業の仕組みや原理のレベルにおいてです。
徹底した模倣から生まれる創造性
本書では、模倣は知的であり、創造的なものと位置づけています。
印象的だったのは、ドトール創業者である鳥羽博道氏の言葉でした。引用します。
「徹底してその人に見倣い、研究し、模倣する。その過程で個人の能力は相当高まるだろう。そして、その高まった能力によって個人のオリジナリティというものが生み出されることになると思う」
創造性は、徹底した模倣から生まれるということです。
真似から忠実に再現しようとすれば、高い能力が要求されます。まずは、真似をする対象の理解からです。模倣の過程では試行錯誤が続き、負荷のかかる作業です。この負荷を通して学習をし、能力が高まります。
守破離の 「守」 から始まるイノベーション
日本には 「守破離」 という考え方があります。
守破離とは
もともとは、武道や芸術等における師弟関係のあり方で、守 → 破 → 離という3つのプロセスです。具体的には、以下です。
守破離のプロセス
- まずは師匠に言われたことの型を 「守る」 ところから修行が始まる
- 次に、その型を自分と照らし合わせて研究することにより、自分に合ったより良いと思われる型をつくっていく。既存の型を 「破る」 という段階
- 最終的には師匠の型から自分自身が造り出した型によって、自分自身と技についてよく理解できる。師匠の型からは 「離れて」 、自在になれる
「守」 から始まるイノベーション
本書を読んで、守破離への考え方が変わりました。
今までは 「破」 と 「離」 が大事だと理解しており、「守」 は単に言われたことをやるだけ、目標とする対象の真似をするにすぎないと思っていました。
本書で強調されているのは、「徹底した模倣のプロセスにおいて、試行錯誤から能力が高まる」 ということです。守破離の守において、いかに学ぶかが重要です。
守から始まるイノベーションを実現するために、徹底的に真似ができるか、表面的な真似ではなく、原理や仕組みの本質まで見抜けるかです。
誰の真似をするのか、その人の何を真似るのか、どうやって真似するかの、真似する対象について、who ・ what ・ what の3つが大切になります。
最後に
本書では、「イノベーションはマネから生まれる」 という視点で、企業がどんな真似をして成長したかの事例が書かれています。クロネコヤマト、トヨタ、スターバックス、ドトールなどです。
どの事例も真似を通した試行錯誤があります。仕組みレベルの理解にまで立ち返り、真似から自分たちのオリジナルを生み出し、イノベーションを起こしました。
この本は、真似という視点で競争戦略をどのようにつくり、実行したかが興味深く読めます。