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ユニ・チャーム SAPS 経営の原点 (二神軍平) 。空軍パイロット撃墜王の研究 「OODA ループ」 から、ビジネスへの示唆

ユニ・チャーム SAPS 経営の原点 - 創業者高原慶一朗の経営哲学 に紹介されていた、空軍パイロットの行動プロセスの研究から、ビジネスへの示唆を考えます。

 

ユニ・チャーム SAPS経営の原点―創業者高原慶一朗の経営哲学

ユニ・チャーム SAPS 経営の原点 - 創業者高原慶一朗の経営哲学

 

 

研究では OODA ループというフレームで、狙撃王と呼ばれるパイロットがなぜ優秀なのかを明らかにしました。

エントリー内容です。

  • OODA ループとは
  • アメリカ空軍の 「撃墜王」 についての研究
  • ビジネスへの示唆

 

OODA ループとは

書籍 ユニ・チャーム SAPS 経営の原点 - 創業者高原慶一朗の経営哲学 に 「OODA ループ」 が紹介されています。

朝鮮戦争の時に、アメリカ空軍が空中戦でのパイロットの行動を分析し導き出した対応プロセスです。分析から、パイロットは四段階の対応をしていることがわかったそうです。OODA は4つの頭文字です。

  • Observe (観察):情報を収集する
  • Orientation (状況判断):収集した情報の意味を考える
  • Decision (意思決定):これからどのように空中戦を戦い勝利を目指すのかを決める
  • Action (行動):実際の行動に移す

 

アメリカ空軍の 「撃墜王」 についての研究

興味深かったのは、本書で紹介されていたアメリカ空軍の OODA ループの研究結果です。

空軍の空中戦では、いかなる状況でも必ず敵機を撃ち落とす 「撃墜王」 と呼ばれるようなパイロットが現れます。アメリカ空軍の研究目的は、空中戦での撃墜王は他の一般的なパイロット比べて何が違うのかを知ることでした。

研究結果から、パイロットが敵機を見つけてから攻撃、または回避行動をするプロセスで、優秀なパイロットとそうではないパイロットを比較すると、3つのことがわかりました。

  • 敵機の観察段階 (Observe) で統計的に有意な差はない
  • 状況判断 (Orientation) と意思決定 (Decision) の速さに有意な差がある
  • 行動 (Action) では有意差はない


つまり、状況判断と意思決定で、パイロットの優秀さが決まるという研究結果です。

本書にはさらに、以下が書かれています。

適切な情報や戦術 (観察、状況判断、意思決定) を欠いた作戦行動はほとんど無意味であり、この OODA ループのサイクルをきちんと回し続けることが勝利の条件となっていました。

さらに素早い作戦行動 (状況判断と意思決定) により戦況を変化させ、敵がその状況に対応する前に次の行動を起こすことで、敵に 「対応するいとまを与えない」 ことが、勝利を約束するというのです。

 (引用:ユニ・チャーム SAPS 経営の原点 - 創業者高原慶一朗の経営哲学)

 

ビジネスへの示唆

空軍パイロットから得られた OODA ループの研究結果は、ビジネスにも示唆を与えてくれます。

経営判断への示唆

この本には、次のように書かれています。

企業行動にも重要な示唆を与えてくれます。変化の激しい経営環境のなかで、企業間格差は、観察段階、行動段階ではそれほど見られません。

すなわち、市場のニーズの変化を観察する能力の違いや意思決定後の行動力の優劣は、業績の大きな差にはつながらず、状況判断と意思決定のスピードが業績を左右することになるのです。

 (引用:ユニ・チャーム SAPS 経営の原点 - 創業者高原慶一朗の経営哲学)

 

データ分析への示唆

空軍パイロットの研究結果は、企業経営の他へも示唆があります。例えば OODA ループをデータ分析に当てはめてみます。

  • 観察:データを収集し集計する
  • 状況判断:集計結果を分析し結果をまとめる。分析結果はどう解釈できるかを考える
  • 意思決定:データ分析のレポートの読み手に何を伝えるか (示唆や提案) を決める
  • 行動:レポートを作成する


空軍パイロットの OODA ループ研究からの示唆は、データ分析およびレポートが優れているかどうかは、「状況判断 (どう解釈できるか) 」 と 「意思決定 (示唆や提案を決める) 」 により左右されることです。

OODA ループは回し続けるものなので、1回の観察から行動で終わるわけではありません。行動の後に次の観察が発生します。

先ほど、データ分析を OODA に当てはめた時に、観察を 「データ収集と集計」 としました。データ収集や集計の前にも、別の OODA があります。

  • 観察:レポートの読み手が何を知りたいかを調べる (ヒアリング等)
  • 状況判断:読み手の課題意識、すでに知っている情報、新規情報として何が知りたいか、レポートの情報は何に使われるのか (読み手にとってどんな価値があるか) を考える
  • 意思決定:レポートでキーとなる仮説やメッセージを考える
  • 行動:レポートのストーリーを仮でつくる


レポートを作る時に、いきなりデータ収集や集計をするのではなく、1つ前にこれらをやっておくことが望ましいです。ポイントになるのは、このループでも2つめの 「状況判断」 と、3つめの 「意思決定」 です。

 

ユニ・チャーム SAPS経営の原点―創業者高原慶一朗の経営哲学

ユニ・チャーム SAPS 経営の原点 - 創業者高原慶一朗の経営哲学