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確率思考の戦略論 - USJ でも実証された数学マーケティングの力 (森岡毅 / 今西聖貴) 。マーケティングの本質は顧客視点での 「選ばれる理由」 をいかにつくるか

確率思考の戦略論 - USJ でも実証された数学マーケティングの力 という本から、マーケティングの本質的なところを考えます。

 

 

エントリー内容です。

 

マーケティングの本質

マーケティングにおいて大切なのは、いかに自社商品やサービス、ブランドを人々から選んでもらうかです。

選ばれる理由

選ばれるということは、競合に比べて何かしらの選ばれる理由があります。たとえ無意識で選ばれたとしても、自分たちの商品やブランドが選択された理由があるのです。

重要なのは、顧客視点での選ばれる理由をいかにつくるかです。選択理由にこそ、自分たちの競合に対する 「強み」 が存在します。

強みとは何か

強みは相対的なものです。比べる競合に対して、相対的に優れていることです。

選ぶ側の消費者や生活者の視点で見れば、頭に選択肢があります。選択肢とは、自社と競合商品で構成されるものです。選択肢を一つの束にしたものが、その人にとってのカテゴリーです。売り手にとっては市場となります。

大事なことは、カテゴリーや市場はあくまで生活者や消費者の頭の中にできるもので、売り手が自分たちの都合で決めることは、本来はできないということです。

強みは、その選択肢の中で相対的に決まります。比べられる相手によって、同じことでも優位になることもあれば、劣位になることもあります。

 

強みを定量評価する M

確率思考の戦略論 - USJ でも実証された数学マーケティングの力 という本に、強みを評価するためにどう考えればいいかについて、示唆に富む内容が書かれています。

強みを定量化する数式

本書では、マーケティングの戦略的な指標として 「M」 という考え方が提示されます。M から、強みを定量的に数字で評価します。

M とは、ターゲットとする消費者全体における 「一人あたりの選択回数」 です。M を数式で表すと以下のようになります。

M = 全選択数 ÷ 消費者の人数

  • 全選択数 (分子):延べ選択回数
  • 消費者数の人数 (分母):ターゲット消費者全体の人数。自社ブランドや他社ブランドを選ばなかった人も含まれる


M は、自社ブランドを消費者が選択した延べ回数を、消費者の人数で割ったものです。例えば、選択延べ回数が100回で、消費者が50人という状況であれば、M の値は 2 です。

選択数とは、商品やサービスであれば購入数です。本書は USJ というテーマパークについてなので、来園数となります。

M を増やすために

確率思考の戦略論 という本には、M を増やすために2つのやり方があると書かれています。

水平方向と垂直方向の2つです。それぞれ、次のような考え方です。

  • 水平方向:選んでくれる人の人数を増やす (間口)
  • 垂直方向:選んでくれた人の選択回数を増やす (奥行き)


サービスであれば、利用者自体を増やすのが前者の水平方向、利用者あたりの利用回数を増やすのが後者の垂直方向です。

M (選択数) を増やすことが目的であることを忘れない

本書に書かれていたことで示唆があると思ったのは、セグメンテーションやターゲティングの注意点でした。

目的と手段の明確化です。

マーケティング施策の全体として M を増やすこと、つまり、自分たちが選ばれる確率を上げることを目的にし、セグメンテーションはあくまでそのための手段であるという指摘です。

セグメンテーションによって、ターゲットとする人々を分けることが目的になってしまい、全体として M が小さくなるのは本末転倒です。

ターゲットとなる人をセグメンテーションによって分けるのは、セグメントごとに選択をする理由が異なるからです。選択理由が異なるのは、求めるニーズが違うからです。

ニーズという選ぶ理由が違う人に、それぞれに適したマーケティング施策をします。具体的には、ニーズごとに訴求する強みを明確にし、それぞれに合ったコミュニケーションをします。

 

まとめ

最後に、今回のエントリーのまとめです。

  • マーケティングで大切なのは、いかに自分たちの商品やブランド等を選んでもらうか。その確率をどうやって高めるか
    • 選択してもらう確率を高めるために、選ばれる理由 (相対的な強み) をどうつくるか
    • 強みは、誰と比べるかで変わる。比べる相手 (競合) は消費者が決める
  • 強みの定量的な評価は 「M = 全選択数 ÷ 消費者数」 でできる。M の増やし方は、水平方向 (間口) と垂直方向 (奥行き) の2つがある
  • ターゲットを分けるのは、人によってニーズが異なり、それによって選択理由が違うから。従ってセグメントごとにマーケティング施策も変わる。ただし、セグメンテーションをすることは手段であり、目的は M (選択数) をいかに増やすか