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カップヌードルをぶっつぶせ! - 創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀 (安藤宏基) 。カップヌードル流 「余韻を残してリピート購入につなげよ」 の極意

カップヌードルをぶっつぶせ! - 創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀 は興味深く読めた本でした。

 

 

エントリー内容です。

  • ロングセラーの秘訣 (2つ)
  • 意図的に不完全さを保つ
  • 不完全さをあえて保つことからの示唆

 

ロングセラーの秘訣

印象的だったのは、ロングセラーを生み出すための考え方です。

  • 余韻を残す
  • 自社ブランドへの不満を持つ


以下、それぞれについてご説明します。

余韻を残してリピート購入につなげよ

故・安藤百福は、食品をリピート購入してもらうために、あえて余韻を残すことが大事だと言いました。

安藤百福は、チキンラーメンカップヌードルを発明した、日清食品の創業者です。以下は本書から該当箇所の引用です。なお、著者の安藤宏基氏は、日清食品ホールディングス株式会社代表取締役社長 (CEO) です (2017年10月現在) 。創業者である安藤百福の次男です。

創業者の安藤百福は、常々こう言っていた。

 「食品はおいしすぎてはいけない。少し余韻を残すことによって、再購入につなぐことができる」

この 「余韻」 という言葉の解釈がきわめて難しいのである。

 (中略)

腹いっぱい食べると 「満腹感」 が大きすぎる。濃厚な味でおいしすぎると 「満足感」 がありすぎる。これでは当分リピートはない。もう少し食べたいな、と思うあたりで余韻を残すのが、売れる秘訣なのである。

カップヌードルをを食べて、「めちゃくちゃおいしい」 と言う人は少ない。「いつ食べてもまあまあおいしい」 というところで留まっている。しばらくして小腹が空くと、また食べたいという気持ちが起こってくる。おそらくカップヌードルは、その量と味わいにおいて、満足感と満腹感を絶妙なバランスで満たしている商品なのだと思う。

それが、三度の食事を脅かすことなく、あくまで準主食として、「カップめんのトップブランド」 のポジションを四十年近くにわたって守り続けてきた理由なのである。

 (引用:カップヌードルをぶっつぶせ! - 創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀)

 

自社ブランドへの不満がロングセラーの秘訣

本書に書かれていたことでもう1つ興味深かったのは、ロングセラー商品になる秘訣です。

作り手自身が、商品やブランドの現状に満足せず、常に不満を持つことが秘訣だとします。引用します。

創業者の言葉に、「成長一路、頂点なし」 というものがある。

ここまで成長したからもういいや、ということは絶対ない。どこまで行っても終わりはない。創業者はチキンラーメンに最後まで不満を感じていたし、「カップヌードルは未完成」 が口癖だった。

 (中略)

振り返ってみると、メーカー自身がブランドに不満を持つことが、ロングセラーになる秘訣ではないかと思う。食品業界におけるブランドの最低基準は 「どんなときでも安心して食べられるかどうか」 である。チキンラーメンカップヌードルもこの基準は満たしながら、実は絶えず時代の変化に合わせて改良を行なってきた。

 (中略)

ブランディングとは新製品をブランドに育成するだけではない。すでにあるブランドをブラッシュ・アップし、その商品が存続する限り、改善、改良を続けていく終わりのない作業なのである。

 (引用:カップヌードルをぶっつぶせ! - 創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀)

 

意図的に不完全さを保つ

ここまで、カップヌードルをぶっつぶせ! - 創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀 から興味深かった2つをご紹介しました。

再購入につなげるためにあえて 「余韻」 を残す。満腹感や満足感がありすぎると、当分リピート購入されない
ロングセラーの秘訣は自社ブランドに不満があること。改善や改良を続けていき、終わりはない

あえて不完全な状態を保つ意味

共通点は、完璧にせずに意図的に不完全さを保つことです。

もし完成してしまうと、後は衰退しかありません。完成した時点で 「終わりの始まり」 です。完璧なものにしないことが意味するのは、あえて不完全な状態を保ち、まだ成長や変化する余地を残しておくことです。

どのくらいの不完全さがよいかの雑感

余韻を残すこと、変える余地を残すことの重要性がわかったとして、難しいのはどの程度の不完全さがよいのかのさじ加減です。

あるべき姿を 100 としたときに、直感的に 50% の完成度では低いように思います。90% では完成に近すぎ、変化させる余地も少ないように感じます。全くの肌感覚ですが、70%~80% 程度な気がします。80% には達していない 「80% 未満」 が上限です。

逆に言えば、10% の不完全さではなく、常に 20%~30% 程度の不完全な状態でバランスを維持することです。

 

不完全さをあえて保つことからの示唆

あえて不完全にしておくことの個人への示唆は、何が考えられるでしょうか。

専門やキャリアへの示唆

例えば自分の仕事での専門性やキャリアに当てはめてみます。満足感を求めすぎず、常に何かに不満がある、足りないと感じる状況が望ましいと言えます。不完全なところが 20%~30% 程度ある状態にしておき、どうすればもっとよくできるかを考えます。

アウトプットの品質を高めるための示唆

他の例では、上司に求められた報告書や提案書を、80% 未満の完成度で見せ、早めに意見や方向性がズレていないかを確認するというやり方です。

仕事のアウトプットに限らず、物事を 80% に仕上げるまでの時間に比べ、そこから 100% の完璧なものにするには 80% までかけたよりも多くの時間が必要になります。

早めに関係者にフィードバックをもらえば、結果的により品質の高いものにできるでしょう。